2021.12.16 その他

”カスハラ”対策できていますか?最低限やっておくべき〇〇とは

カスハラ対策 アイキャッチ

 

カスハラとは、カスタマーハラスメントの略で、顧客が従業員に対して行う不当な要求や嫌がらせのことを指します。恐怖を感じるほどの言動や暴力がぶつけられた従業員のストレスが増加し、退職に至るケースは少なくありません。企業が日頃からカスハラ対策をしておくことは、従業員を守るために必要なことなのです。

しかし、カスハラ対策とクレーム対応の線引きの難しさから、しっかりと対策ができている企業ばかりではないでしょう。この記事では、カスハラとクレームの違いや、カスハラは犯罪となるのか、最低限やっておくべきカスハラ対策を解説します。

カスハラとは?

カスハラとは、顧客が従業員に対して行う不当な要求や嫌がらせのことを指します。一口にカスハラといっても、従業員に対する言動や暴力のぶつけ方はさまざまです。ここでは、カスハラの例を4つのパターンに分けて紹介しましょう。

【カスハラの例】
①顧客としての優遇を求める言動
例)「お客様は神様だ、何でも言うことを聞け」

②不当・過剰・法外な要求
例)「謝罪よりも金を出せ」「慰謝料を払え」

③職務妨害行為
例)数時間にわたり説教や迷惑電話を続ける

④担当者の尊厳を傷つける行為
例)「今すぐ土下座しろ」「個人情報をさらすぞ」

クレームとの違いは?

指を指すクレーマー

カスハラとクレームは「顧客から従業員へ寄せられるもの」としては同じですが、実際には似て非なるものです。カスハラとクレームを混同してしまうと、本来するべき対策や対応ができなくなってしまいます。ここでは、カスハラとクレームの違いを理解しておきましょう。

カスハラは、顧客から従業員へ寄せられる「悪質な」ものです。「ハラスメント」が、いじめや嫌がらせという意味であることからも、カスハラは、顧客からの従業員に対する理不尽な要求ともいえます。カスハラは、その悪質さや理不尽さから、警察や弁護士に相談する必要性も孕んでいるのです。

一方、クレームは、悪質だったり理不尽だったりするものではありません。顧客が、購入した商品やサービスについて意見や不満を持った際に、企業に伝える行為のことをクレームと呼びます。

顧客から寄せられた声が、悪質だったり理不尽だったりするものではない場合は、顧客に対して適切な対応が必要です。企業は、顧客の声に真摯に向き合い、商品やサービスを提供した責任を果たさなければなりません。

カスハラは犯罪?

従業員が顧客の言動や暴力により恐怖を感じ、企業としてしかるべき対応をとる場合、警察や弁護士の協力を仰ぐことがあります。警察や弁護士に相談するということは、カスハラを犯罪として訴えることができるのでしょうか?結論を述べると、カスハラの内容によっては、主に下記のような犯罪として認められ、顧客は逮捕される可能性があります。

・脅迫罪
相手を脅し、恐怖を感じさせること。2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金。

・恐喝罪
相手を脅迫し、金品を騙し取ること。10年以下の懲役。

・強要罪
脅迫や暴力により、相手に義務のない行為をさせること。3年以下の懲役。

・威力業務妨害罪
騒音や暴力などで業務を妨害すること。3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金。

・不退去罪
正当な理由なく相手の住居などから退去しないこと。3年以下の懲役もしくは10万円以下 の罰金。

東京都がカスハラ防止に向け条例制定予定

東京都では、企業の従業員に対し、顧客が理不尽な要求または悪質なクレームをするカスハラを防ぐために、条例を制定する予定です。
カスハラを防ぎ、従業員を守るためのルールを設定することにより、カスハラの撲滅を狙っています。
カスハラを防ぐ目的での条例制定は、全国でも東京都がはじめてです。

近年では、カスハラ被害に遭った従業員が、カスハラの影響により心身の不調を起こし、離職や最悪の場合、自殺にまで追い込まれるといった問題が発生しています。
そのような事例から、東京都は2023年10月より、有識者会議を設け対策を検討し続けてきました。

カスハラから従業員を守る上での、企業における責務を規定する検討が進められ、禁止される行為の具体的な事例については、別途のガイドラインで示す方向です。
また、過剰な迷惑行為に対しては、強要罪といった刑法規定が適用可能なため、条例においては違反者に対し罰則は設定しない方向です。

電話でのカスハラも多い

直接顧客を訪問した際や、メール、インターネット、SNSなど、さまざまな方法でのカスハラがありますが、その中でも特に電話でのカスハラが最も手軽とされています。
直接顧客を訪問した際には、企業の従業員以外に、周囲にいる人の目線や監視カメラが設置されている場合もあり、カスハラが行われにくい環境です。

SNSであれば、その他一般の関係ない人達にも見られる可能性があるため、他の利用者からカスハラと判断されることも少なくありません。
しかし、電話の場合は、顧客が思い立った際にすぐ電話でき、対面でのやり取りではないため周囲の目を気にせずカスハラが行えます。

公衆電話を使ったり、非通知でかけたりすれば、顧客は個人情報がバレることもありません。
このように、電話を使うことで、匿名でカスハラが行えるため、電話を使ったカスハラ事例は多くあり、電話を使ったカスハラへの対策を定めておくことが企業にとって重要な課題となっています。

電話のカスハラへの対策

電話のカスハラへの対策は、主に以下3つです。

マニュアルを作る

カスハラを対策する上で、一番重要な対策ともいえるのが、実際にカスハラがあった場合に対応するマニュアル作成です。
マニュアルでは、顧客の意見の聞き取りをはじめ、回答するまで対応する流れや、カスハラと判断される顧客に対し接客する際の注意点について明記します。
カスハラが行われた際に対処するマニュアルをしっかりと作成しておけば、実際にカスハラが発生した場合でも、従業員はマニュアルに沿って冷静な対応が可能です。

企業側に問題がなくても発生するカスハラもありますが、実際に企業側に問題がありカスハラが行われることもあります。
例えば、企業の従業員が顧客に届ける商品を、本来届けるものと違う商品を届けてしまったことで、顧客が従業員に対し土下座などの行き過ぎた要求をするケースがあります。

このような際に、企業では従業員が間違えてしまった場合の対応方法に関するマニュアルは整備されていることもありますが、行き過ぎたカスハラに対応するためのマニュアルは整備されていないことも多いです。
企業または従業員に対し行き過ぎた嫌がらせや要求を行うカスハラは、一般的な従業員がミスしてしまった際の対応とは違うため、専用のマニュアルを別途準備しておく必要があります。

カスハラが行われる方法には、直接訪問や、メール、インターネット、SNSなど電話以外にもさまざまな種類があるため、方法や顧客の対応によって柔軟な対応が可能なように、さまざまなケースについてのマニュアルを作成しておくことが大切です。

一人対応にならないシステムを構築する

カスハラに対しては、決して一人で向き合わず、組織で力や知恵を合わせ協力して対策する必要があります。
そのため、カスハラに対応しているうちに少しでも何かおかしいなど心身的に違和感を感じた場合には、少しでも早く上司または同僚などに助けを求められるシステムを構築しておくことが大切です。

カスハラを記録するための係は、一人ではなく複数人で対応するなど、一人で抱え込まないための明確なルールを作成し、カスハラが行われた際に接客対応者以外の人でも対応可能なようにしておきましょう。

また、会話を録音・記録することでエビデンスを残し、従業員を守る環境を作ることも重要です。
言った言わないの不要なトラブルを事前に防ぎ、今後のトラブルシューティングにも活用することができます。

通話録音システムについて、詳細は下記をご覧ください。
https://www.optsp.co.jp/product/flexlog.html

会社のスタンスを従業員に把握させる

カスハラが行われた際に、従業員を確実に守る会社の基本的な姿勢などについても従業員に明確に周知しておきましょう。
企業にとってお客様が大切なのは当然ですが、大切な従業員に対しても不当な要求などがあった場合に守るという会社の想いが明確に伝わることで、その後における会社の体制も変化してきます。

効果的なカスハラ対策とは?

電話でクレームを受ける女性

これまでカスハラによる問題が起こっていない企業でも、いつカスハラに遭遇するかわかりません。大切な従業員を守るためには、あらかじめ効果的なカスハラ対策を行っておく必要があります。

カスハラ対策としては、マニュアルを作ったりOJTを行ったりして、従業員のカスハラへの理解を深めることが大切です。そして、現時点でとくに対策を行っていない企業が、最低限しておくべきことは、カスハラの現場を「録音」できる体制を整えることです。

従業員がカスハラを受けた後、警察や弁護士に相談するにあたり、録音した音声データは重要な証拠となります。また、肉声は、顧客の身元を探し出す手掛かりにもなるため、録音することはとても大事なことなのです。

企業として、まずは録音機器を準備しましょう。録音機器としては、スマートフォンの録音機能やICレコーダーなどが挙げられます。これらは比較的費用をかけずに準備できますが、万全のカスハラ対策を行うのであれば、AIを搭載した録音機器がおすすめです。

AIを搭載した録音機器なら、肉声を録音できるうえ、音声を自動で文字に起こすこともできます。警察や弁護士などに相談するときも、音声データとテキストデータの両方を提出できるので、効率的に捜査が進むはずです。

カスハラ対策 まとめ

この記事では、カスハラとクレームの違いや、カスハラは犯罪となるのか、最低限やっておくべきカスハラ対策として録音の重要性について解説しました。
企業が生き残っていくためには、顧客の獲得と同様に従業員を守ることが必要です。

適切なカスハラ対策を行っていれば、いざというときに従業員を守れるうえ、従業員が安心して働ける環境となるはずです。
従業員の企業に対する信頼度が高ければ、結果としてサービス品質の向上も望めるでしょう。